外付けGPU(eGPU)は、ノートパソコンやコンパクトなデスクトップPCに性能を追加できる非常に魅力的なオプションです。特に、ゲーマーやクリエイティブな作業をする人々にとって、PCの性能を大幅に向上させる手段として人気です。
しかし、外付けGPUを導入した後に「後悔した」という声も少なくありません。この記事では、外付けGPUを選ぶ際に気をつけるべき5つの問題点と、それらを解決するための方法について詳しく解説します。
外付けGPU『eGPU』の概要

外付けGPU(eGPU)は、ノートパソコンや一部のコンパクトなデスクトップPCに接続して、グラフィックス処理性能を大幅に向上させるデバイスです。
特に、薄型で軽量なノートパソコンでは、内部に強力なGPUを搭載できない場合が多いため、外付けGPUがその制限を補う画期的なソリューションとして注目されています。
通常、外付けGPUは「GPUボックス」と呼ばれる専用のケースに高性能なグラフィックボード(GPU)が搭載されており、それをパソコンに接続することで使用します。
接続には主に「Thunderbolt 3」や「Thunderbolt 4」などの高速データ転送規格が採用されており、この規格によって内蔵GPUに近いパフォーマンスを実現することが可能です。
以下に、外付けGPUの基本的な仕組みやメリット、主要な用途について詳しく解説します。

外付けGPUの仕組み
外付けGPUは、次の3つの主要コンポーネントから成り立っています。
- GPUボックス
GPUボックスは、外部GPUを搭載するための専用ケースです。内部には、GPUを固定するスロットや、GPUの動作を支える電源ユニット、冷却システムが組み込まれています。高性能なGPUを搭載できるだけでなく、接続したパソコンに安定した電力供給を行う仕組みが備わっています。 - グラフィックボード(GPU)
実際に画像処理や計算を行うパーツです。ゲーム、動画編集、3Dレンダリングなど、高度なグラフィック処理を必要とする作業の中心となる部分であり、NVIDIAやAMD製のディスクリートGPUが主流です。 - 接続ケーブルと規格
外付けGPUとパソコンを接続するために「Thunderbolt」規格が使用されます。特に、Thunderbolt 3およびThunderbolt 4が主流で、これらは高速なデータ転送(最大40Gbps)を可能にするため、GPUが高いパフォーマンスを発揮できる環境を提供します。
外付けGPUの主な用途
外付けGPUは、次のような用途において活躍します。
1. PCゲーム
ノートパソコンの内蔵GPUではプレイが難しい最新ゲームを高いフレームレートで楽しむことができます。外付けGPUを使えば、4K解像度やリアルタイムレイトレーシングといった高度なグラフィックス設定でゲームを快適にプレイ可能です。
2. クリエイティブな作業
動画編集、3Dモデリング、グラフィックデザインなどの作業は、高いグラフィックス処理能力を必要とします。外付けGPUを使用することで、レンダリングやエフェクト処理の時間を大幅に短縮できます。
3. VRやARの開発・利用
VR(バーチャルリアリティ)やAR(拡張現実)のアプリケーションは、非常に高度なグラフィック処理を必要とします。外付けGPUを利用することで、対応するノートPCでもスムーズな開発や体験が可能になります。
4. AI・機械学習
GPUは並列計算に優れており、AIモデルのトレーニングやデータ解析に最適です。外付けGPUを導入することで、ノートPCでの機械学習プロジェクトも効率的に進められます。
外付けGPUで後悔する理由

外付けGPUを導入する際には、多くのメリットが期待できますが、それと同時にデメリットも無視できません。
ここでは、外付けGPUを使って後悔する可能性がある5つの主な理由について詳しく解説します。
高額なコスト
外付けGPUを導入する際、単純にグラフィックカードを購入するだけでは済みません。専用の拡張ボックスやThunderbolt 3/4対応の高性能ケーブルが必要です。
これらの周辺機器の費用が積み重なることで、総コストはデスクトップPCのグラフィックカード以上に膨れ上がることがあります。
- 外付けGPU本体(グラフィックカード)
- eGPUボックス(拡張ボックス)
- Thunderbolt 3/4ケーブル
- 高出力の電源アダプタ(必要に応じて)
また、ハイエンドGPUや高品質のボックスを選ぶと、全体の費用がさらに高くなります。そのため、費用対効果を考慮しないと、導入後に後悔してしまうことがあるでしょう。
解決策
- 中古品を探す: 中古市場では、状態の良い中古の外付けGPUや拡張ボックスを見つけることができます。これにより、かなりのコストを抑えることが可能です。
- 入門モデルを選ぶ: ゲームや作業の負荷がそれほど高くない場合は、エントリーレベルのGPUで十分なこともあります。これなら初期費用も低く抑えられます。
- クラウドゲーミングを検討: 高性能なPCを必要とせずにゲームをプレイできるクラウドゲーミングのサービスを利用することで、外付けGPUを購入する必要がなくなる可能性もあります。
性能の制限
外付けGPUは、ノートパソコンやミニPCの内蔵GPUに比べると圧倒的に性能が向上しますが、デスクトップPCに搭載されたディスクリートGPU(直接マザーボードに取り付けられるタイプ)ほどの性能は期待できません。
Thunderboltの接続を介するため、帯域幅の制限やレイテンシー(遅延)が発生しやすくなります。
- Thunderboltの帯域幅の制限(Thunderbolt 3は最大40Gbps、Thunderbolt 4も同様)
- GPUの性能をフルに発揮できない設計(内部接続の方が効率が良い)
- 接続ケーブルによる遅延
これにより、特にグラフィック性能が重要な作業(高画質なゲームやクリエイティブなアプリケーションの利用)では、デスクトップPCと比べて期待通りの性能が得られない可能性があります。
解決策
- Thunderbolt 4対応のボックスを選ぶ: Thunderbolt 4対応の拡張ボックスを選ぶことで、可能な限り高速なデータ転送が可能になり、性能の低下を最小限に抑えることができます。
- 軽量なゲームやアプリケーションに限定する: 高負荷なゲームではなく、比較的軽めのゲームやソフトウェアを使用することで、性能制限の影響を感じにくくなります。
携帯性の低下
外付けGPUを使用する場合、ノートパソコンの利便性が大幅に損なわれることがあります。特に、拡張ボックスや周辺機器を一緒に持ち運ぶ必要があり、外出先で気軽に使うのは難しくなります。
- 外付けGPUボックスのサイズと重量
- ケーブルや電源アダプタの持ち運び
- デスク上でのスペースの占有
本来ノートパソコンは軽量で持ち運びやすいデバイスですが、外付けGPUの導入によって「据え置き機」のような運用が求められることがあります。
解決策
- コンパクトな外付けGPUを選ぶ: 小型で軽量なGPUボックスを選べば、多少は持ち運びが楽になります。また、カバンに入れて持ち運べる製品も市場に出ています。
- 据え置き利用に徹する: 外付けGPUを使うときは、ノートパソコンをデスクトップPCのように固定して使う方が効率的です。持ち運びを諦めることで、ストレスが減るかもしれません。
複雑なセットアップ
外付けGPUを使うには、単に接続するだけではなく、ドライバのインストールやBIOSの設定、場合によっては追加の設定作業が必要になることがあります。特に初心者には、このセットアップが複雑に感じられ、トラブルが発生しやすいです。
- ドライバのインストールと更新
- Thunderboltの設定や許可
- ソフトウェアの互換性チェック
これらの手順をしっかりと理解していないと、GPUが正しく動作しなかったり、パフォーマンスが出ないなどの問題が生じます。
解決策
- マニュアルをしっかり読む: 製品に付属するマニュアルをよく確認し、手順通りにセットアップを進めることでトラブルを防げます。
- サポートを利用する: メーカーのサポートサイトやユーザーフォーラムで解決策を探すと、問題解決がスムーズになります。
互換性の問題
外付けGPUを購入しても、パソコンとの互換性の問題が発生することがあります。
特にMacユーザーやWindowsの特定バージョンを使っている場合、ドライバやOSのバージョンにより動作が不安定になることがあるため注意が必要です。
- PCのThunderboltバージョンの違い
- OSやドライバの非対応
- 特定のアプリケーションでの不具合
このような互換性の問題は、場合によっては全く動作しないケースもあり、外付けGPUの導入が大きなストレス要因となる可能性があります。
解決策
- 推奨機器を選ぶ: 各メーカーの推奨するPCや拡張ボックスの組み合わせを事前に確認してから購入することで、互換性の問題を未然に防ぐことができます。
- 事前に詳細なリサーチを行う: 購入前に、互換性情報や実際に利用しているユーザーの口コミをしっかりと確認しましょう。
まとめ|外付けGPUの導入は慎重に

外付けGPUは、PCの性能を飛躍的に向上させる便利なツールですが、高額なコストや携帯性の低下、性能の制限、セットアップの複雑さ、互換性の問題といった、見逃せないデメリットも存在します。
これらの問題に対しては、事前の情報収集や、適切な製品選びが解決策となります。自分の用途や予算に合わせた選択を行い、後悔のないように外付けGPUを導入することが大切です。